第5回: ムーニースコーチとは?

ムーニースコーチとは?

ムーニースコーチとは

「ムーニー粘度測定機で測定できる未加硫ゴムの貯蔵安定性の指標」

になります。
B練りの未加硫ゴムは加硫促進剤や加硫剤が配合されているため、高温多湿環境に置いておくとゆっくり部分架橋が進んでいく“ヤケ”と呼ばれる状態になります。
未加硫ゴムがヤケてしまうと成型機などで加工できなくなるため、貯蔵安定性の高い材料が好まれます。

ムーニースコーチの見方は?

ムーニースコーチで貯蔵安定性をどのように見ているかというと

「あるムーニー粘度の値から5、10、35ポイント分の粘度が上がるまでにかかる時間」

で見ています。
これをそれぞれt5、t10、t35といっています。
ちなみにこの数字は私がよく見た数字なだけなので、会社によってはt20とか別の数字で見るところもあるかもしれません。
また、上記の「あるムーニー粘度の値」をVmといいます。
これはViscosity minimumの略で、測定中で一番低くなったときのムーニー粘度です。

ムーニー粘度測定機で未加硫ゴムの粘度を測ると、まずは熱によって材料が可塑化され粘度が下がっていきます。
そしてある程度熱がかけ続けられると粘度の低下が止まり、今度は部分架橋は始まり、粘度が上がっています。この部分架橋が始まる前の下がりきったところがVmです。
このVmから粘度が5上がるまでにかかった時間がt5、10でt10、35でt35となります。

ムーニースコーチの注意点は?

「Vmから粘度が5上がるまでにかかった時間がt5」と書きましたが、このt5には「測定開始からVmに至るまでの時間」も含まれています。
Vm→t5までの時間が短いと「架橋が速い=貯蔵安定性が悪い」ということになりますが、測定開始→Vmまでの時間が長いと、Vm→t5までの時間が短くても貯蔵安定性は悪く見えないような感じになってしまう可能性もあります。
材料によってはVmまでガクッと下がるものや、だらだらゆっくりと下がるものもあるので、初めて測定する材料はその辺もよく見ておかなければなりません。

また材料の硬度が低い場合、t35のように大きな粘度上昇を見ようとすると、粘度が35ポイント上がる前に材料が完全に架橋されてしまい、t35が見れなくなることもあります。
以前私が扱っていた材料で低粘度かつ低硬度のものがありましたが、t10までしか見れず、それ以降は途中からフラットな粘度曲線を描いていました。

測定条件は?

ムーニー粘度では100℃が基本でしたが、ムーニースコーチの場合は100℃、125℃、140℃……など様々です。
私が見てきた中だと125℃が多かった印象ですが、材料や規格によって様々です。

このムーニースコーチはある一定環境下でのゴム材料の経時変化を見る場合などによく使われますのでちゃんとおさえておきたいところです。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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