第8回: 架橋(加硫)とは?

架橋とは?

架橋とは読んで字のごとく「橋を架けること」ですが、ゴムでは「ポリマーの主鎖同士を結合させること」を指しています。
私たちがよく知っているゴムが伸びたり縮んだりするのは基本的にこの架橋が行われているからです。

このゴムの架橋というのは用いるポリマーによって様々な種類がありますが、一番ポピュラーかつ古くからあるものは硫黄を使った架橋、いわゆる「加硫」と呼ばれるものです。
EPDM、NBR、SBR、NR、IR、BR…多くのポリマーは硫黄で架橋することができます。
しかし硫黄だけでは架橋にかなりの時間がかかってしまうので、加硫促進剤や加硫促進助剤といった薬品も併用されるのが基本になります。
硫黄単体は8個の原子が環状に連なっていますが、この結合が熱と促進剤で切られてポリマー鎖の橋渡しをします。

この際、橋渡しする硫黄がいくつ連なっているかも重要になります。

  • C-S-C   : モノスルフィド結合
  • C-S-S-C  : ジスルフィド結合
  • C-S-S-S…-C: ポリスルフィド結合

これらの結合のうちどれが支配的になるかでゴムの物性が変わってきます。
特に圧縮永久歪みというゴムの“へたり性”に関わる項目や耐熱性ではモノスルフィド結合、ジスルフィド結合で良好となる方向にいきます。
モノスルフィドやジスルフィドにしたい場合は、配合で硫黄を少なく、促進剤を多く使う「EV加硫」という処方にするか、加硫剤Rという単原子硫黄を放出する有機薬品を使うのがよく使われる手法です。

ただ、この辺の結合種類の違いによる物性への影響というのはさほど大きくないので、他の配合剤(ポリマー種の選定や補強材、その他機能性薬品)をいじった上でそれでも目標を達成できないというときに手をつけるパターンが多いですね。

ちなみに配合にも寄りますが、150℃以上の温度をかければ加硫することができます。
時間がかかってもいいならもっと低い温度でもいけます。
NBRのようなポリマーに対しては分散性はイマイチなので、NBRベースの材料に硫黄を添加する際はロールの温度を100℃くらいにして温度をかけて混ぜ込みます。(熔融分散)

硫黄以外の架橋方法は?

硫黄以外の架橋方法では、過酸化物架橋というのもあります。
これは有機過酸化物を使いポリマー鎖にラジカルを発生させ、ポリマー鎖をC-C結合で架橋するというものです。
有機過酸化物は日油株式会社(https://www.nof.co.jp/)の製品がよく使用されます。(パークミルD、パーブチルPなど)

過酸化物架橋はEPMやEPDMでよく使われますが、C-C結合をつくるため、硫黄架橋に比べて圧倒的に耐熱性が良くなります。
一方、EB(破断伸び)が極度に低下しますが、共架橋剤を併用することで多少改善することはできます。

また、有機過酸化物はある温度に達した段階で分解してラジカルを発生させるので、硫黄と比較して貯蔵安定性が良い方向にいきます。(過酸化物自身の半減期はあります)

難点としては過酸化物特有の臭気がきつい点です。
ゴムの加工屋さんではこの臭気故に過酸化物架橋NGというところもあります。
(個人的にはパークミルDやパーブチルPなら全然耐えられるレベルだと思っていますが…)

他にも、

  • ACM(アクリルゴム) ⇒ アミン架橋
  • IIR(ブチルゴム) ⇒ 樹脂架橋
  • CR(クロロプレンゴム) ⇒ 酸化亜鉛架橋

など、それぞれのポリマー種でそれぞれ適した架橋方法があります。

また架橋密度や架橋点間分子量、架橋点間距離といった要素もあります。
なるべく均一な架橋構造をつくることでTS(破断強度)やEBといった物性も大幅に向上できるということで大学での研究テーマになっているところもあります。

ポリマー種や配合剤で物性のおおまかなところは決まるとはいえ、この架橋要素もバカにはできないので、ゴム材料の開発するならちゃんと抑えておきたいところですね。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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