カーボンブラックとは?
カーボンブラックとはゴムという材料で欠かすことのできない粉体の補強材です。
世の中に数あるゴム製品で黒い製品があれば、それにはこのカーボンブラックが入っています。
カーボンブラックは油を意図的に不完全燃焼させる方法(オイルファーネス法)で製造されるものが多く、国内では東海カーボンや旭カーボン、海外ではキャボットなどの製品が有名です。
ゴムの補強材と書きましたが、基本的にはポリマー鎖がカーボンブラックの表面に化学的に吸着したり、物理的に絡まったりして材料全体に強度をもたせます。
ファーネス系カーボンのグレードは?
ファーネス系カーボンは粒形の大きさでいくつかグレードがあります。
粒形 小(補強性 大)
↑
SAF (Super Abrasion Furnace, 超耐摩耗性)
ISAF (Intermediate Super Abrasion Furnace, 準超耐摩耗性)
HAF (High Abrasion Furnace, 高耐摩耗性)
MAF (Medium Abrasion Furnace, 中耐摩耗性)
FEF (Fast Extrusion Furnace, 早押出性)
GPF (General Purpose Furnace, 汎用性)
SRF (Semi Reinforcing Furnace, 半補強性)
↓
粒形 大(補強性 小)
IISAFなど、より細かくグレードが別れる場合もありますが、タイヤと産業用ゴム製品に使われるカーボンは上記のいずれかだと思ってもらって構いません。
オイルファーネス法で製造されているので末尾は全てファーネスのFがついています。
基本的に粒形が小さくなるほど比表面積が大きくなるので、少量でも補強効果が高くなります。硬度上昇も大きくなります。
ただし、粒形が小さくなると自己凝集も大きくなるため、分散性が悪くなります。
- HAF~SAF⇒タイヤ配合によく使用される
- SRF~FEF⇒一般産業用ゴム製品によく使用される
私の場合、主に一般産業用ゴム製品の設計開発をしていたので、SAFとか使ったことはありません。
ただし、一般産業用ゴム製品でもHAFなどは使われますし、場合によってはISAFなどを使うこともあるので、結局は配合次第になります。
さらにカーボンブラックには粒子径だけでなく「ストラクチャー」という、粒子の凝集状態のパラメーターもあり、例えば同じHAFグレードでもハイストラクチャー(HS)とローストラクチャー(LS)といったようにストラクチャーの発達具合の違いもあります。
このストラクチャーはあまり気にしない場合も多いのですが、HSとLSでは引張物性なども変わってきます。
どうしても規格内に物性が収まらない場合、こういった部分も考慮して配合設計を行うときもあります。
他のカーボンブラックは?
上記のファーネス系カーボンはゴムの補強材として使われますが、これ以外にも製法の違いで特殊なカーボンも存在します。
- MT: サーマル法。ガス状の炭化水素から製造すため純度が高い。粒形が非常に大きい。FKM(フッ素ゴム)配合でよく用いられる。
- アセチレンブラック: アセチレン法。原料はアセチレン。純度が高く、導電性も高い。乾電池の原料。
- ケッチェンブラック: ケッチェン法。通常のCBを高温下で賦活処理して製造。粒子内に空孔があり高い導電性が得られる。
導電性ゴム材料などにはケッチェンブラックなどを使うことがありますが、ファーネス系カーボンよりも価格が高く、少量の配合でも粘度上昇・硬度上昇が大きいので扱いは困難です。