第10回: 老化防止剤とは?

老化防止剤とは?

老化防止剤(老防)とはゴムの劣化(熱、オゾン、紫外線etc…)を抑制する働きのある薬品類になります。
プラスチックなどの樹脂類に配合される場合は「酸化防止剤」と呼ばれますが、基本的な働きは一緒です。
国内メーカーでは大内新興化学工業や川口化学工業、海外メーカーではBASFなどが販売しています。

具体的にはどんな薬品?

熱劣化に対する老防は過酸化物のラジカルを捕縛する必要があるので、一般的には二級アミンやフェノール系の構造をもつ有機薬品が使われます。
またポリマーに対する相溶性や熱劣化の温度域、場合によっては架橋阻害なども考慮して選定していきます。

上記の他にも「ワックス」というものがあります。
これは結晶ないし粉末の材料が多いのですが、添加して加熱架橋すると、ゴムの表面に溶融したワックスが浮き出てコーティングされます。
これによって、外部から物理的にオゾンや過酸化物ラジカルをブロックして劣化を防ぎます。

どんなゴムにも老防は必要?

上記で挙げた老防は主鎖に二重結合をもつジエン系ゴム(NR、NBR、SBRなど)にはほぼ必須になります。
では非ジエン系ゴムであるEPMやEPDMには入れなくていいのか? と言われると、製品如何によっては入れなくても大丈夫です、という答えになります。

しかし、昨今の自動車に使われるEPDMを使ったゴム製品などでは一昔前では考えられない耐熱性を要求される場面が増えています。
EPDMを用いた配合の一般的な耐熱性は、私のイメージだと120~130℃×72hぐらいという感じです。
やはりポリマー主鎖に二重結合がないことがそこそこの高さの耐熱性に繋がっているのですが、最近ではメーカーの方と話をすると150~170℃の耐熱性を要求されることが普通になりつつあります。

もはやこの温度域はアクリルゴムやヒドリンゴムが出番になるような領域なのですが、コスト面や求める性能面からEPDM以外は使用できない、という制約がある場合も。
そのため、現在では製品規格の耐熱性を満足するために、EPDMでも老防を使用する場面は多いです。

例えば、高温域での耐熱性EPDM配合の場合は、

EPDM+ノクラックCD or イルガノックス1010+ノクラックMB+過酸化物架橋

※ノクラックCD   : 芳香族二級アミン系老防、高温域で活躍
 イルガノックス1010:ヒンダードフェノール系老防、高温域で活躍
 ノクラックMB   :ベンゾイミダゾール系老防、二次老防

のようにするとある程度高温域でのゴムの寿命は伸ばすことができるでしょう。

また余談ですが、三井化学ではEPDM自体を改良して高耐熱グレードに仕上げたポリマーも販売しています。
(特殊グレードすぎるせいかわかりませんが、EPTポリマーのカタログには載っていない)

ともあれ老防は多くのゴムで使われる大事な配合剤なので、いろいろ試してみるといいと思います。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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