第14回: ゴムにおける酸化亜鉛とは?

・酸化亜鉛の種類は?

これまで紹介した通り、ゴムの配合剤というのは数多くあるのですが、その中でも「酸化亜鉛」と「ステアリン酸」についてはほぼどんなゴム材料にも入っていると思ってもらって構いません(もちろん例外もありますが)。
今回はまず「酸化亜鉛」について書いていきます。

化学式はZnO。白色粉末でゴム業界では「亜鉛華(あえんか)」と呼んだりもしています。
酸化亜鉛と一口に言っても、

  • 酸化亜鉛1種、2種、3種
  • 活性亜鉛華
  • 透明亜鉛華
  • 表面処理亜鉛華

など、細かく種類があります。
基本的に私がよく使っていたのは酸化亜鉛2種と呼ばれるものです。

他にも変わり種として「パナテトラ」という名前の酸化亜鉛もあります。
これはパナソニックから販売されている結晶がテトラポット形状の酸化亜鉛で、電子顕微鏡なんかで粒子を見るとトゲトゲしたマキビシみたいな形が見られます。
靴底のゴムなどに配合されている例があり、パナテトラのトゲトゲによって耐滑性を上げ、滑りにくくする目的で入れているそうです。
以前価格を聞きいたことがありましたが、非常に高価で、配合単価が安い一般的な工業用製品に使われるようなゴム配合に使うのは難しそうな感じでした。


酸化亜鉛1種、2種、3種の違いは?

1種、2種、3種の違いは不純物量(クロム、鉛など)の違いで、1種→3種で酸化亜鉛中に含有する不純物量が増えます。

これだけ聞くと1種を使えばいいと思われますが、当然価格も上がるため配合単価に影響してきます。
逆に不純物が多い3種は不要なのでは、とも思いますが、価格を抑えたり、ゴム材料に少しでも粘着性を持たせたい場合などでは3種が選ばれます。
このため、価格と性能のバランスから2種が選ばれやすくなります。


・活性亜鉛華とは?

活性亜鉛華は上記の亜鉛華に比べて粒子径が小さい(=比表面積が大きい)、分散性がいい、などの利点があります。
酸化亜鉛は分散性が悪いため、分散不良を気にする配合では上記の酸化亜鉛2種よりも活性亜鉛華が選ばれます。
もちろん価格も上がります。
個人的には正同化学工業のAZOや井上石灰工業のMETA-Zなどがよく使用されるイメージです。


酸化亜鉛がゴムに使われる理由は?

大きな理由は、以下の2つです。

  • 加硫促進助剤として
  • 加硫剤として

加硫促進助剤として

酸化亜鉛は主に加硫促進剤(MBTなど)を活性化させて、硫黄による架橋の促進助剤として働きます。
推定反応機構は省略しますが、硫黄における架橋ではほぼ必須になります。
冒頭で「ほぼどんなゴム材料にも入っている」と書いたのはこのためです。
他にも、次回紹介するステアリン酸と反応してゴム系中でステアリン酸亜鉛を形成し、これが加硫促進作用に寄与すると言われています。

加硫剤として

EPDMやNBR、SBRなどの硫黄架橋する多くのゴムでは加硫促進助剤としての効果を発揮しますが、CR(クロロプレンゴム)とCSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)に関しては、塩素部位を反応点にして亜鉛で架橋してしまいます。
いわゆる「金属酸化物架橋」と呼ばれるものです。
そのため、硫黄架橋するゴム材料のような感覚でCRやCSM配合のA練りに酸化亜鉛を入れてしまうと、混練り最中に架橋反応が発生してボロボロのヤケたゴムが出来てしまいます。


先にも少し書いたように、酸化亜鉛の難点としてはゴム中への分散性が悪い点です。

混練り時に十分に練られていないと白い点がポツポツと出る分散不良を起こしてしまいます。
そのため、混練り時にはなるべく初期の工程で投入することが多くなります。
特に天然ゴムのように分子量が高いポリマーを使った配合では、ポリマーと一緒に投入して素練りをすることで、酸化亜鉛の分散を期待すると同時に酸化亜鉛粒子による物理的なポリマー鎖のせん断も期待します。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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