第17回: 充填率とは?

充填率とは?

第16回のゴムの混練りについての記事ではミキサーと呼ばれる機器でゴムを練るのが基本と書きました。
ではこのミキサーにどれくらいの量の原材料を入れて混練りするのか? これが充填率になります。

ミキサーはそれぞれ大きさ(容量)が決まっており、例えば加圧型ニーダーなら「3Lニーダー」「75Lニーダー」、プラストミルであれば「250ccプラストミル」「600ccプラストミル」、もっと大型のバンバリーミキサーになれば「3号バンバリー」「9号バンバリー」など、大体は容量が表記されます。
「9号バンバリー」などの“号”というのも容量を表していて、1号≒約20Lぐらいになります。
なので9号バンバリーの場合、チャンバーの正味容量は180L程度となります。


充填率は100%ではダメなの?

では、9号バンバリーで1バッチ分のゴム材料を練る場合、約180Lの容量いっぱいに必要な原材料を入れて混練りするのはありでしょうか?

答えは当然、NGです。

例えば比重1のゴム材料をトータルで1800kg作りたいという場合を考えます。
1バッチで180kg練れれば10バッチで済むので生産性を考えれば容量いっぱいを使って練りたい気持ちになります。
これが「充填率100%」という状態になります。

しかし、そんなことをしたらまず混練りは出来ません。
皆さんは一度くらい焼肉のタレの瓶やドレッシングの瓶を振って中身を混ぜたことがあるかもしれません。
その際、新品で中身がパンパンに入った瓶と少し使って7割くらいが入った瓶ではどちらが振って混ぜやすかったでしょうか?
ほとんどの方は7割くらいの方と答えるのではないかと思います。

基本的に「混ぜる」ということは、その容器内の空きスペースで行われます。
なので充填率100%では空きスペースがないので混ぜることができなくなります。


充填率はどれくらいがいいの?

ゴムの混練りに関して言えば、

「その練ろうとしているゴムコンパウンドのムーニー粘度がどれくらいになるか?」

で決める、という感じになります。
もっと砕いて言えば、

「その練ろうとしているゴムコンパウンドが硬いのか柔らかいのか」

ということです。

例えば同じ配合材料を使っていても部数の違いで、コンパウンドムーニーがML(1+4)100℃=100と40のものでは充填率が変わってきます。
ムーニー粘度が低い=柔らかい」材料であれば、混練り時にかかる負荷や混練り時の発熱量は低くなるので充填率は高くできます。むしろ高くして少しでも混練り時に発熱量を稼がないと製品不良や生産性の低下、材料の分散性悪化に繋がります。

逆に「ムーニー粘度が高い=硬い」材料であれば上記とは逆に充填率を低くしないと、ミキサーにかかる負荷が高すぎて機器破損や、混練り時の温度上昇が早すぎて最悪材料が燃える、なんてこともあり得ます。

これが例えば250ccプラストミルのような小型の混練り機であれば、よほど変わった配合でなければ充填率はさほど気にせずに一定(70%くらい)でもあまり問題はありません。
1回で練れる量が少ないので発熱量や負荷もたかが知れてるからです。
しかし上記に挙げたような3号バンバリーや9号バンバリーなど、1回で数十kg~数百kgを練れる混練り機を使用する場合、負荷や発熱量はとても無視できないレベルで発生するので、ちゃんと考えて設定する必要があります。
もっと言えば、そのミキサーのローターの羽の枚数(2WS、4WHなど)や接線式か噛合い式か、ミキサーの冷却性能なども充填率を決める際のファクターになります。


充填率を考える上で覚えておくと便利なことは?

ここまで読まれた方はすでにおわかりかと思いますが、ゴムの混練りは基本的に「容量」が基準になります。
ですので、ゴム材料の配合を立てたら、その配合部数の材料を容量換算しなければなりません。
このとき、各原材料の真比重の値が必要になるわけですが、部数が多くなる主要な原材料(ポリマー、カーボン、各種フィラー、可塑剤)の真比重を覚えておくとスムーズに作業ができます。
例えばEPDMは0.86~0.87、ファーネス系のCBなら1.8…といったような感じです。

合わせて、各種ポリマーの基礎硬度とカーボンや各種フィラーなどの硬度上昇具合(○○phr添加すると硬度が××ポイント上がる/下がる)なども覚えておくと、周囲から一目置かれるかもしれません。

ゴムの混練りをするときに適切な充填率を決めるのは非常に大事な作業になるので、混練り時には意識するようにしましょう。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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