第18回: ミキサー充填関係の計算について

以前、旧ブログの方で充填率についての記事をあげた際に「比重や硬度をどのようにニーダー容量に換算するのか、具体的な計算例を」とのコメントを頂きました。
こちらのブログの方でも書いておきたいと思います。


必要なのは重量⇒体積への換算

例えば以下のような配合があるとします。

  原材料      重量部数   比重
ポリマー(EPDM)   100    0.86
カーボンブラック     80    1.80
パラフィン系オイル    50    0.87
酸化亜鉛         5     5.6
ステアリン酸       1     0.9
合計          236

そして、この配合を容量50Lのニーダーで混練りするとします。

ここでまずやるべきは、上記の重量部数(=重量)の体積への換算です。
重量のままではミキサーにどの程度入れるかがわからないからです。
比重というのは≒密度と考えていいので、計算としては重量を比重で割っていきます。

  原材料       体積
ポリマー(EPDM)   116
カーボンブラック     44
パラフィン系オイル    57
酸化亜鉛         0.9
ステアリン酸       1.1
合計          219

つまり、上記の配合は236gで約219mlの体積の配合であると言えます。
あとはミキサーの容量を配合体積で割れば何倍のスケールで充填できるかがわかります。


注意点!

ここで、50Lのニーダーだから

50000ml/219ml=228倍

と単純に計算してはいけません。
第17回の充填率の記事でも少し書きましたが、50Lニーダーに50L分の材料をパンパンに詰め込んでも空きがないので混練りはできないからです。

バンバリーミキサーであれば、充填率70%前後で設定するのが一般的ではないかと思いますが、私個人の感覚では、ニーダーのような半密閉式だともう少し低めの充填率(60~65%)で設定することが多いかもしれません。


材料の粘度も考慮しよう!

ここで、充填率の設定には材料の粘度が考慮されます。
頂いたコメントでは「比重や硬度を~」とありましたが、硬度というのは加硫・架橋後の材料の硬さを指すものなので、混練り段階では材料のムーニー粘度を考慮することになります。
つまり、混練りする配合の混練り後のムーニー粘度をある程度予想する技量も必要になります。
今回の計算例では細かいところまで設定していませんが、例えば上記の配合のムーニー粘度が高そうなら少し低めに、ムーニー粘度が低そうなら少し高めに充填率を設定するのがいいかもしれません。


計算の続き

仮に、今回は60%の充填率にするとした場合、

50000ml x 0.6=30000ml

よって

30000ml/219ml=137倍

つまり上記の配合を50Lニーダーで充填率60%で混練りする場合、各原材料を137倍にすればいいということになります。

原材料         必要量
ポリマー(EPDM)   13.7 kg
カーボンブラック    10.96 kg
パラフィン系オイル    6.85 kg
酸化亜鉛         685 g
ステアリン酸       137 g
合計          32.3 kg

よって、1バッチ=32.3kgの材料を生産することできます。

以上が私がよく行っていた一連の計算になります。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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