ゴムの難燃性の規格とは?
ゴムの難燃性についての規格というのは、アメリカのUnderwriters Laboratories社が認定するUL94規格というのが用いられるのが一般的です。
詳細は省きますが、これはゴムやプラスチックなどの短冊状試験片に垂直方向の下端から火を近づけてどれくらいの時間燃えているかなどで、以下の様な等級に分類します。
(難燃性の高い順に)
5V、V0、V1、V2
ただし、5Vというのはかなり厳しい条件になるのでゴムの世界ではまず出てきません。
よく聞くのはV0、V1、V2あたりになります。
ゴム材料の開発をやっているとお客さんから「V0かV1を達成できる難燃性がある材料が欲しい」というような感じで難燃性を要求されることがあります。
難燃性の配合とは?
ゴムの配合で難燃性を付与する方法は大きく2パターンかと思います。
- ハロゲン化物、またはハロゲン化物+三酸化アンチモンの添加剤を配合する。
- 水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウムなどのフィラーを配合する。
<ハロゲン化合物と三酸化アンチモンの配合>
例えば有機溶剤でメチレンクロライドは不燃性溶媒、ということからもわかるように、ハロゲン化合物というのは基本的に燃えません。
ですので、CR(クロロプレンゴム)やCSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)のようにゴムの主鎖構造中にハロゲンを持つゴムは、何もしなくてもこれだけである程度の難燃性が備わっています。
ただし、V0のような高い難燃性を確保するならハロゲン化合物に加えて、「三酸化アンチモン」を配合しなければなりません。
これを加えることでハロゲン化合物と反応し不燃性をガスを発生して燃焼を防ぐというものです。
この方法はかなり効果が高く、難燃性付与としてなかなかいいのですが、いくつかの難点もあります。
- 材料の比重が大きくなる
- ハロゲン化合物が嫌われがち
- 三酸化アンチモンが厄介
ClやBrなどのハロゲンというのは環境面の観点からいろいろと法規制が厳しくなっており、使用が難しい状況になってきています。
「ハロゲンフリー」なんて言葉も最近ではよく耳にしますね。
それに加え、三酸化アンチモンも材料業界では厄介原材料として有名(?)です。
これは2017年6月から厚生労働省が定める特定化学物質障害予防規則の対象に追加されてしまったためです。
これによって「三酸化アンチモンの製造と取り扱う作業全般」が規制の対象となりました。
つまり粉体の三酸化アンチモンを使ったゴム材料の生産も規制対象になってしまったわけです。
粉体ではなく、マスターバッチ化されたものなら対象外になる、という話もあるのですが、それを使うと配合自体が変わってしまい、下手すると材料物性も変わるので安易に変えるのも難しい場合もあります。
ですので、今後この方法で難燃性を付与していくのは難しいのではないかと思います。
<水酸化アルミニウムなどのフィラーを配合する>
水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを使用する方法というのは、今のところ法規制的にも問題はありません。
水酸化物フィラーの水分で難燃性を付与しようという方法ですが、これはこれで難点があります。
- 大量に配合しなければならない
- ハロゲン+三酸化アンチモンの方法と比較して難燃性で劣る
上記の様な水酸化物フィラーで難燃性を持たせようとすると、非ハロゲンポリマーでない場合は配合量としては50phr以上は入れないと十分な効果は出ないと言われています。
実際、私が見てきた配合でもこれくらい入れてるのは度々目にしました。
基本的に水酸化物フィラーには補強性がほとんどないため、大量に入れれば炭酸カルシウムと同様に材料の物性が悪くなってしまいます。
そしてそんなに無理して配合しても、ハロゲン化合物や三酸化アンチモンを使った配合に比べて劣るような難燃性になることが多いです。
以前開発を行っていたとき、あるユーザーから「EPDMでV1以上の難燃性を持つ配合」について相談を受けてサンプルを作ったことがあります。
配合の半分以上がEPDM(よく燃える炭化水素ポリマー)とカーボンブラック(煤)で構成されたゴムでV1 or V0を達成するという超高難易度案件でしたが、そのときは配合の縛りはなかったので塩素化ポリエチレンと三酸化アンチモンを加えた配合でサンプルを作ったりしました。
あれは結局その後どうなったのだろうか、とふと思い出しました。
(たぶんV2くらいでダメだったのでは)
ゴムに限らず難燃性というテーマは難易度が高い場合が多いので、正直あまり関わりたい分野ではありませんでした。