第21回: ゴムの調色とは?

ゴムの調色とは?

一般的に産業用に使われるゴム製品(タイヤやゴムホース、防振ゴム等)は配合中に補強材であるカーボンブラックが用いられるため黒色をしています。
しかし、世の中には黒色以外のゴム製品も多数あります。例えば靴底とか、Oリング、輪ゴム、風船等々。

こういった色ゴムのゴム材料の生産方法は簡単で、A練りでカーボンブラックの入っていない白色のマスターバッチを作成し、B練りで加硫剤などと一緒に顔料を投入して混ぜるだけです。
ちなみに私がいたところでは顔料マスターバッチ(EPやNBRなどのポリマーに顔料粉末などを一定の割合で混ぜて)を使用していました。

そして色ゴムで大変なのはタイトルにある「調色」、つまり色合わせです。

例えば「青色の材料が欲しい」と顧客に言われたとき、顧客に特にこだわりがなければ青色顔料を数phr入れてやればそれで終わりなのですが、顧客にこだわりがあり「これと同じ色合いにして欲しい」みたいなことを言われると難易度が上がります。


調色の仕方は?

私が調色を行う場合、まずはその色が明るい色か暗い(濃い)色かを見ます。
明るい色の場合はベースのA練りを明るい白に、暗い色の場合は暗めの白になるようにします。

注意するのは、この白の色合いは未加硫状態ではなく加硫後の色合いで考えることです。
カーボンブラックを使わず白色フィラー(シリカ、タルク、クレー、炭カル等)だけ使えばなんでもかんでも同じ白になる……というわけではありません。
加硫という150℃~170℃の熱が数十分~数時間かけられると、使用しているフィラーの種類によっては黄色味かかった白だったり、黒味かかった白になったりします。

ここで上手いこと狙った感じの色合いの白になったら、ようやく顔料マスターバッチで調色していきます。
明るい色の場合は少量、暗め(濃い)場合は多めに顔料を入れるのがポイントでしょうか。
あとは学校の美術の授業でやったように色を混ぜ合わせてトライ&エラーで色を近づけていく感じです。
出来たら、他の人にも見てもらった方がいいでしょう。
色の見え方というのは個人差が出てきやすいので、自分ではいい塩梅だと思っても、他者に見てもらったらちょっと違うなんて言われた、というのはよくあります。


黒色の場合は?

黒色配合でも薄い黒か濃い黒か、という2択があります。
薄い場合は少量のソフトカーボン(SRFとか)、濃い場合は配合的に問題なければハードカーボン(HAFやISAF)、あるいは粘度や硬度に影響を与えにくい染色用のカーボンを使います。
(染色用のカーボンはファーネス系カーボンよりコストが高いのでゴムではあまり使われませんが)

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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