③医療事業推進室を新設し、新ヘルスケア事業開発室の機能を含め、医療事業へ本格参入するための事業開発を行う。
日刊ケミカルニュースより
11月には、新型コロナウイルスワクチンの効果を高める「核酸免疫補強剤」を、ナスダック上場のバイオ医薬メーカーの米ダイナバックス・テクノロジーズに提供する。核酸医薬事業を24年3月期までに売上高400億円規模に育てる。
日本経済新聞より
昨今、画期的な新薬を生み出すのがますます困難になるなか、世界の製薬・農薬企業は創薬研究にリソースを集中し、製法開発や製造のプロセスを外部に委託する傾向がますます強くなっている。AGCはこの市場に大きなビジネスチャンスを見出し、バイオ医薬品と低分子医農薬品のCDMO事業に取り組むライフサイエンス分野を今後の成長領域の一つに掲げ、戦略的に強化している。
AGC 新卒採用サイトより
三菱ケミカル・ギルソン社長 医薬事業「日本の売上大半は現実的なオプションでない」 別の可能性検討へ
三菱ケミカルホールディングス(HD)のジョンマーク・ギルソン代表執行役社長は12月1日、経営方針説明会に臨み、2025年度までの期間を対象とする新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定したと発表した。「当社グループが競争優位性を有する成長市場にフォーカスしたポートフォリオ運営を推進する」とし、ヘルスケア(ワクチン、中枢神経、免疫炎症)を最重要戦略市場の一つに位置付けたのが特徴だ。
ミクスOnlineより
ここ最近、日本の大手化学企業・素材企業が医療・医薬・ライフサイエンス関連分野に本格的に力を入れ始めてきています。
上記の企業以外にも私がよくとりあげるJSRや宇部興産などもそうですね。
元々、これらの大手化学系企業は少し前、あるいはだいぶ前から研究開発、医薬品原料の受託合成など、多かれ少なかれ医療・医薬系の分野に関わっていました。
宇部興産なんかは10年以上前に医薬事業部を設立していますし、AGCも1980年代から受託製造をやり始めています。
ただ当然、これらの化学企業は自社を支えるメインの事業があるわけで、こういった医療・医薬系分野の事業は副業みたいな感がありました。
それがここに来てどこも本格参入やさらなる注力を開始したのは、言わずもがな、以下の理由からでしょう。
- 2019年末からコロナ禍になった
- SDGsによりカーボンニュートラル(脱炭素)の風潮が高まった
- ガソリン車⇒EV車・燃料電池車などへの転換が始まる
未知のウイルス、新型コロナが世界中に蔓延したことで、世界的に急激に重症化を防ぐワクチンや治療薬の研究開発力や需要が高まりました。
また、ワクチンや治療薬だけでなく陽性かどうかを判定する検査キットの需要も高まりました。
当たり前ですが、医療・医薬と言えば医学や薬学が基本になるわけですが、医療というのはもっと総合的なものです。
例えば薬というのは薬効成分が大事ですが、その薬そのものをどのように患者に届けるのか? どのようにして投与するのか?
また、臓器移植などを行うのは医者の役割ですが、その臓器を医者の元まで安定的に遠距離へ輸送する場合はどうするのか?
化学企業や素材企業の持つ技術力では直接的にケガや病気の患者を治したりはできませんが、その治療行為をより円滑に、効率的に行うようにするためにはうってつけです。
なので今の大手化学系企業は自社の持つ技術を
「±1℃の範囲で一定温度に保つ」
「投与された薬が目的の部位に狙った時間で効果が作用するような体内デリバリーシステム」
「従来よりも持続性の高い抗菌・抗ウイルスシステム」
などといった方面に展開して、間接的に医療方面へ参入しようとしています。
加えて、世界的なSDGsに由来するカーボンニュートラル方向へのシフトによって、これまで化学企業が得意としていた石油化学系事業の今後の伸び幅があまり期待できなくなっているというのも大きな要因です。
例えばこれまでガソリン車に使用されていたある素材がEV車や燃料電池車に代わることで使用されなくなるとすると、それを主力にしていた企業は今後世界で戦えなくなるでしょう。
ガソリン車⇒EV車の転換でこういったものは出てきますし、これまで使用されていた素材も従来とは違う要求項目も発生してきます。
ともあれ「医療系需要の世界的高まり」+「石油化学系の世界的敬遠」によってこういった化学系企業のライフサイエンスへの参入が加速していると思っています。
そして今後、世界的な少子化・高齢化もあり、医療分野の重要性というのはさらに増加するとも思います。
私も他人事ではないかもしれませんが、これから化学系企業で働く若い方はこの辺りの医療・医薬分野の総合的な知識や動向の把握も怠らずにアップデートしていかないとついていけなくなってしまうかもしれません。
一緒に頑張りましょう……