第22回: 油展ポリマーとは?

油展ポリマーとは?

油展ポリマーとは、ポリマーにすでにオイルが含侵されているものになります。ほぼEPDMにしか見られません。

三井化学のEPTの品番
⇒末尾に “E” が付いています。

ENEOSマテリアル(旧JSR)のEP品番
⇒末尾に “E” が付いています。(付いていないものもあります)

クムホのKEP品番
⇒末尾に “E” や “N” が付いています。(付いていないものもあります)


何故オイルが含侵されているの?

ポリマーのムーニー粘度を下げ、製造メーカーがポリマーを仕上げられるようにするためです。
EPDMはグレードによってはポリマーの分子量が数十万~数百万とかなり大きくなり、オイルを含侵させないとポリマーの乾燥工程後にガチガチになってしまいます。


どんなオイルが使われているの?

品番カタログには具体的なオイル種類は記載されていませんが、一般的にはパラフィン系オイルが使用されています。

三井化学のEPTの品番
⇒ルーカントシリーズ

ENEOSマテリアル(旧JSR)のEP品番
⇒ダイアナプロセスオイルPWシリーズ

※あくまで筆者がゴムに携わっていたときの情報です。
 変わっている可能性もあるため注意してください。


油展ポリマーで配合を組むときの注意点は?

油展ポリマーに含侵されているオイル量はグレードによって決まっており、各メーカーのカタログに記載されています。
例えばENEOSマテリアル(旧JSR)のEP96なら50phr、EP98なら75phr……など。
これはポリマー分100phrに対して50phrや75phrのオイルが含まれているという意味になります。

ゴムの配合を組む際には、このカタログに記載された油展量が配合計算にも乗ってきます。
つまり、例えばEP96を単体使用して配合を組もうとすると、50phrのオイル量が乗ってくるため、EP96は100phrではなく、150phrと設定しなければなりません。
(EP96を100phrにすると、内訳はポリマー分は66.7phr、オイル分が33.3phrとなってしまいます)

オイルはゴムの配合中ではムーニー粘度の低下や、加硫後の硬度の低下になどに寄与しますが、この油展オイルも同様の効果があります。
しかし、個人的な経験では粘度低下や硬度低下に対する寄与は、外添オイルよりも悪い感じがあります。
油展ポリマーは分子量の高さ(=引張物性の良好さ)が魅力ではありますが、配合を組む際には使いにくさもあるため、非油展ポリマーとの組み合わせで使用するのが良いかと思います。

液体窒素(えきちー) のアバター

作者: 液体窒素(えきちー)

某化学系企業に勤める高分子系の材料開発屋。 大学での専攻は有機合成化学。卒業後、2012年から約7年、ゴム材料の品証、開発、製造などに従事。その後、粘着剤に関わり、現在は接着剤の開発を行っています。 副業はアズールレーンの指揮官。 趣味は文房具、宝石、シルバーアクセサリーなど

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