住友化学がEPDMを販売終了
住友化学は、このたび、合成ゴムのエチレン・プロピレンゴム(EPDM)について、千葉工場(千葉県袖ケ浦市)にある製造設備を停止し、2023年3月末をめどに販売を終了することを決定いたしました。
エチレン・プロピレンゴムの販売終了について
エラストマー関連で大きなニュースが入ってきました。
2023年3月末で住友化学がEPDMポリマーの販売を終了するとのこと。
撤退理由は設備の老朽化による保全などのコスト増と、それをしてまで見合った収益が見込めないことため。
本当にエラストマー業界には逆風が吹いていますね…
影響はどれくらい大きそう?
ゴム製品業界、精練加工業界は大慌てではないでしょうか。
国内でEPDMを販売している会社は大きく3社あります。
- JSR(EPシリーズ、約36,000トン/年)
- 三井化学(EPTシリーズ、約95,000トン/年)
- 住友化学(エスプレンシリーズ、約40,000トン/年)
そもそも製造会社がそんなに多くないのに、そのうちの一角がなくなるわけです。
年間生産量だけ見るなら三井化学が圧倒的ですが、実は単体で見ると住友化学はJSRよりも生産量が多かったりします。
ただ、JSRは韓国のグループ企業のクムホポリケムで約220,000トン/年のKEPシリーズの生産量があり、これを含めるとトータルでは三井化学(海外工場を含む)よりも多くなります。
ともあれ、国内だけなら2番手の住友化学がやめると言っているので影響はだいぶ大きいと思います。
住友化学のEPDMとは?
住友化学が生産しているEPDM・エスプレン(ESPRENE)は化学系の方なら一度は聞いたことがあるかもしれない「チーグラー・ナッタ触媒(バナジウム系)」で重合して生産しています。古典的なEPDMポリマーです。
性能面で言えばこれといった特筆すべきグレードがあるわけではなく、品種もそこまでは多くはないのですが、低ムーニー品からスポンジ用途に使われる高ムーニー・高分子量タイプなど抑えるところは抑えているポリマーです。
私はあまり馴染みがありませんでしたが、アメリカにあるライオン・エラストマーという会社がほぼ同様の製法でエスプレンの相当品を製造しています。
エスプレンがなくなったらどうなる?
住友化学のエスプレンは1970年代からあるEPDMで、現在では自動車関係を含め数多くのゴム製品に使われています。
これを使用して製造されている製品はとにかくまず代替ポリマーを探さないといけません。
そして別のポリマーでエスプレンと同等性能が出せるものが見つかったら4M変更をしないといけません。
そのゴム製品が規格に厳しい自動車関連部品に使われていたりすると……
2023年3月なんてまだ先のように思えても、実は約1年半後ですからね。
思いのほか時間がないように感じます。
そもそも今回の件に限らず、材料業界では今まで使用していた原材料がサプライヤーの都合でなくなってしまう「廃番(ディスコン)」というのはしばしば起こるのですが、とにかく現行品との比較をおこなって差異の有無を確認しないといけなくなるので、非常に時間が取られて大変な作業になります。
もし私が以前の職場にいたらまともな新製品の開発時間はあまり取れなくなっていたかもしれませんね…
関係各所の技術者の皆さんは大変とは思いますが頑張ってください。