以前、日本の大手化学メーカー・JSRがエラストマー事業を売却するという発表をしたことについてあれこれ書きました。
このJSRの発表とほぼ同時期に、以下のようなトピックも発表されました。
韓国クムホ、JSRからクムホポリケムの株式50%を146億円で買収
https://korea-elec.jp/posts/21051206/
韓国のクムホ(クムホ)石油化学が、系列会社であるクムホポリケムの株式50%について、共同出資社である日本のJSRから買収することが分かった。
コリア・エレクトロニクスより
JSRが錦湖ポリケムの株を手放す、という内容です。
錦湖ポリケムとは?
以前、以下の記事で国内の大手EPDM製造メーカー3社について記載しました。
では世界的に見た場合の大手EPDM製造メーカーはどこになるのか?
おそらく以下の4社になると思います。
- ダウ・ケミカル(NODELシリーズ)
- エクソンモービル(VISTALONシリーズ)
- アランセオ(KELTANシリーズ)
- 錦湖ポリケム(KEPシリーズ)
化学系の方ならダウ・ケミカルとエクソンモービルは聞いたことがあるかもしれません。
アランセオについては少しマイナーですが、
オランダのDSMという化学メーカーで製造されていた
↓
ドイツのランクセスがDSMのエラストマー事業を買収
↓
ランクセスがサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと共同出資でアランセオという合弁会社を設立
(アランセオの本社はオランダ)
↓
ランクセスがアランセオの全保有株(50%)をサウジアラムコに売却
というややこしい変遷があります。
ランクセスはアランセオと販売委託契約を結んでいるので、国内では現在でもランクセスが販売していると思うので「ランクセスのケルタン」でも間違いではないのですが、正式には「アランセオのケルタン」になると思います。
話が逸れましたが、これら3社に並んでEPDM製造メーカーとして有名なのが韓国の錦湖(クムホ)ポリケムになります。
錦湖ポリケムは1985年に韓国の錦湖石油化学とJSRの合弁会社として設立され、現在ではアジアで1位、世界で4位のEPDM生産量を誇る会社になっています。
生産量は220,000トン/年と、国内大手3社の年間生産量を足しても届かない量を製造しています。
錦湖ポリケムの特長は?
錦湖ポリケムはエクソンモービルの技術をベースにしていますが、JSRとの合弁会社だけあってJSRのEPシリーズとほぼ同等性能のKEPシリーズを販売しています。
(例えばJSRのEP96に対してクムホのKEP960や、EP65に対するKEP650など)
また価格もJSRのEPよりも安価であったり、すでにポリマー関連ではほとんど新規開発を行っていないJSRに対して、クムホでは独自のグレードを多く開発して積極的に売り込みもしています。
私も以前、クムホの技術者の方とお会いして製品紹介等をされましたが「こういうインデックス(エチレン量や分子量など)のポリマーが欲しい、というのがあれば開発検討します」というようなことも話しており、メーカーとしての歴史はそこまで長くないものの技術力には自信が見て取れる感じでした。
同じくEPDMのオーダーメイドをするといっていた住友化学は再来年でEPDMから撤退してしまいますからね…
余談ですが、錦湖石油化学は三井化学とも共同出資で錦湖MITSUI化学という会社も設立しています。
ただこちらではゴムではなく、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)をメインで生産・供給しています。
今回のJSRのエラストマー事業の売却によって錦湖ポリケムの保有株を手放すというのは、国内のグループ会社も含めてエラストマー関連を一切合切を売却対象にしたことを考えれば当たり前の行動ではあります。
しかし、錦湖ポリケムは錦湖石油化学の100%子会社になるとのことですが、逆にエネオスは錦湖ポリケムの株をJSRから一緒に買っておけばよかったのでは? と思ったのですが、そこは何か会社間でいろいろ話があって錦湖石油化学への売却になったのでしょうか?
エネオス、果たしてJSRのボロボロ設備だけでやっていけるのか…