・ゴムにおけるステアリン酸とは?
前回はゴムにおける酸化亜鉛の役割について書きましたが、今回はゴムにおけるステアリン酸の役割についてです。
ステアリン酸は炭素数18の脂肪酸です。
これを入れる理由に関しては酸化亜鉛ほど書くことはそんなにありませんが、入れる理由としては以下の2つになります。
- 加硫促進助剤として
- 加工助剤として
加硫促進助剤としては酸化亜鉛の回でも少し書きましたが、ゴム中で酸化亜鉛と反応しステアリン酸亜鉛を形成し、これが加硫促進剤を活性化させて促進効果に寄与すると言われています。
加工助剤としては、ステアリン酸は低融点の飽和脂肪酸ということで、金属(ロール、ミキサー内部、加硫シート作成時に使う金型など)に対するゴムの粘着防止効果があります。
もちろんステアリン酸だけで全て防止できわけではないので、あまりに粘着性が高い配合では他の専用の加工助剤を添加するのが一般的です。
ちなみにあまり量を入れすぎると混練り時には滑剤としての効果が高くなってしまいます。
つまり混練り時にミキサー内でゴムが滑って練れなくなってしまうという状態になります。
・酸化亜鉛とステアリン酸の添加量は?
酸化亜鉛とステアリン酸の添加量については特に決まってはいませんが、私がこれまで見てきた配合だと、
- ポリマー100に対して、酸化亜鉛3、ステアリン酸2
- 〃 酸化亜鉛5、ステアリン酸1
のどちらかが多い感じでした。
私が自分で配合を立てるときは下の「酸化亜鉛5、ステアリン酸1」で組んでいました。
割と古い配合なんかは上の処方で組んでるのが多かったかもしれません。
とても分かりやすかったです。ありがとうございました。
ステアリン酸にはオレイン酸やエルカ酸があると思いますが、どう区別しているのでしょうか。
教えて頂きたいです。宜しくお願い致します。
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コメントありがとうございます。
ご質問の件ですが、確かに脂肪酸ではC18でオレイン酸やC22でエルカ酸などもありますが、私の経験上、不飽和結合を含む脂肪酸は使用したことはありません。
一般的にはほぼステアリン酸、あるいはステアリン酸とパルミチン酸の混合物というイメージです。
おそらくですが、これは実際に使用する際のハンドリング(取り扱い性)や保存性の問題かと思います。
飽和脂肪酸に対して不飽和脂肪酸は、不飽和結合が存在することで基本性状が液状になる、又は固体状であっても結晶配列が乱れるので融点が低下します。
大量に原材料を使用する製造現場では、液体の原材料よりも固体の原材料、特に結晶性の高いものが計量しやすい/原材料ロスが少なくなるなどの理由で好まれます。また、固体状であっても融点が低いと冷蔵・冷凍保管が必要になります。
ちなみにオレイン酸やエルカ酸を使用してもポリマーに対する相溶性が問題なければ、ステアリン酸と同様の効果は出るのではないかと思います。
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